住宅ローンや下の子供の教育費もあるから、出来れば実家に教育資金の一部を援助してほしいので、贈与税について詳しく教えてほしいと相談を受けました。
教育費用は、人生の3大費用と言われています。
その中でも大学費用が一番支出が多いと思います。
日本金融公庫の令和3年度「教育費負担の実態調査結果」によると大学在学費用は、4年間合計で国立414万円、私立大学文系608万円、私立大学理系732.8万円が必要です。
この他、授業料以外にも通学定期代又は家賃、生活費、施設設備費や教科書代などにお金がかかります。
せっかく実家から教育資金を贈与してもらったのに、贈与税がいくらかかるのか心配されている方もいらっしゃると思います。
教育資金が非課税になる「教育資金の一括贈与の非課税措置」についてお答えします。
教育資金の一括贈与に関する贈与税非課税措置について
実家から教育資金を贈与してもらう場合、きちんと手続きをすれば最大1500万円までは「教育資金の一括贈与の非課税措置」の特例を適用できます。
※この制度は令和8年3月31日まで適用されます。
No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁
この特例は、(贈与者)贈与する側と受贈者(贈与を受ける側)の両方に特定の要件を満たす必要があります。
・贈与者→直系尊属(父母や祖父母)であること
・受贈者→①年齢が30歳未満
②前年の合計所得金額が1000万円以下
今回は実家から教育資金を贈与してもらう場合のお話です。
※生計を一にする親子間、つまり扶養義務者が通常必要とされる学費・教材費・塾代・文具費や生活費でお金を渡す場合は課税されません。
教育資金贈与の範囲と対象項目
どのようなものが教育資金に当てはまるのか。
「教育資金の一括贈与の非課税措置」は、学校に納めるお金だと1500万円までは非課税です。
つまり、入学金や授業料は1500万円までは非課税になります。
それ以外の学用品や通学定期代、塾代は1500万円のうちの500万円までは非課税になります。
ただし、23歳以上の場合は、学校以外に支払われる金銭は課税されるのでご注意ください。
大学に通うために下宿している家賃は、教育資金にはなりません。
教育資金贈与の注意点と申し込み方法
「教育資金の一括贈与の非課税措置」は、一括贈与なので都度お金を渡すのではなく金融機関で手続きを行います。
1.金融機関に教育資金用の口座を開設します。
2.金融機関経由で教育資金非課税申告書を提出する。
3.贈与を受けた教育資金は、教育資金口座に預けて必要な時に払い出します。
4.払い出した教育資金は、教育資金に充当した証明として、金融機関に領収書を提出します。
ここで気を付けてほしいのは、1500万円までは非課税になるから、最大まで贈与してもらい、もし使いきれなかった場合、残金に贈与税がかかります。
残金を直系尊属(父母や祖父母)の口座に戻すことができません。
契約した時点で、贈与となります。
「教育資金の一括贈与の非課税措置」の契約終了
教育資金の一括贈与の非課税措置の契約終了はいつでしょうか。
・教育資金口座の残高がゼロになった時
・受贈者(贈与してもらった人)の死亡
・受贈者(贈与してもらった人)が30歳になった時。
受贈者(贈与してもらった人)が死亡した場合は、残金があっても贈与税は非課税になります。
暦年課税(通常の贈与)の適用条件
教育資金贈与を非課税にする対策は教育資金の一括贈与だけではなく、通常の贈与として暦年課税があります。
この暦年課税は、一括贈与に比べると金額はかなり少なくなりますが、1月1日〜12月31日までに受け取った合計金額が110万円以下であれば、贈与税はゼロになり申告も不要です。
参考までに暦年課税の計算方法
贈与税額=(贈与税の課税価格-基礎控除110万円)×税率
暦年課税は、贈与者、受贈者、贈与財産の種類に制限がありませんので、長期間に渡って少しずつ贈与する場合に向いています。
ただ、定期的に贈与をしていたら、それは定期贈与とみなされる場合があるので気を付けてくださいね。
まとめ
実家に教育資金の援助を頼んだ場合、要件を満たせば「教育資金の一括贈与の非課税措置」の特例が適用できます。
教育資金の範囲は、学校に納める入学金や授業料はもちろん、23歳以下であれば、学用品や通学定期代、塾代も非課税になります。
手続き方法は金融機関経由で契約可能です。
契約時の贈与金額が使いきれなかった場合は、残金に贈与税がかかるので必要な額だけ贈与してもらいましょう。
「教育資金の一括贈与の非課税措置」は、適用要件に制限があるため、もし要件が満たされない場合は、暦年課税も視野に入れて教育資金に備えるといいでしょう。
ここに記載されているのは、筆者の経験に基づく一般的な見解です。