長年勤務されていたTさんが退職しました。
60歳で定年退職され、再雇用で64歳まで勤務されていました。
歳を重ねると身体的な負担が増え、65歳を待たずに退職をすることを決めたそうです。
退職後も仕事は続けられるようなので、65歳未満なら雇用保険の失業手当を申請できます。
![Chita](https://chita-san-blog.com/wp-content/uploads/2023/09/23013962.jpg)
Tさん長い間お疲れさまでした。
65歳未満 vs 65歳退職: 支給金の違い
実は退職や失業後に受け取れる雇用保険は、65歳で種類が変わります。
65歳未満は失業手当
正式には「基本手当」といいます。
失業中の方が再就職を目指すための支援手当です。
失業手当の受給条件
- 雇用保険の被保険者であった期間が通算して12ヶ月以上ある。(離職からさかのぼって2年間において)
- 失業の状態にあること。
65歳からは高年齢求職者給付金
離職した方が受ける手当の一つで、65歳以上の被保険者が失業した場合に支給されます。
高年齢求職者給付金の受給条件
- 被保険者期間が通算して6か月以上あること。(離職からさかのぼって1年間において)
- 失業の状態にあること。
年齢 | 種類 | 給付日数 | 給付日 |
65歳未満で退職 | 失業手当(基本手当) | 最長150日 | 待機期間+給付制限あり |
65歳で退職 | 高年齢求職者給付金 | 最長50日 | 一括 |
上記の表で分かるように、給付日数は100日の差が生まれます。
この差を金額にすると、
【例】
日額5千円の場合
失業手当 5千円×150日 合計 75万円
高年齢給付金 5千円×50日 合計 25万円
受け取る金額は50万円も違ってきます。
さらに、失業手当の給付日数を延長する方法があります。
公共職業訓練の制度を利用する。
公共職業訓練とは、職業訓練によりスキルアップを通じて早期の再就職を目指すための制度です。
この制度を利用すれば、さらに失業手当の給付期間が延長されます。
それに加えて、訓練科目はさまざまで受講は無料。
受講期間は3ヶ月〜2年となっています。
やはり、スキルがある方が再就職には間違いなく有利です。
シニア層の求人ニーズが高い科目を選択して受講することをお勧めします。
さらに、受講期間中は、失業手当が延長されるので、安心して受講できます。
65歳未満の失業手当と年金の関係性
まず、Tさんの雇用保険の被保険であった期間は、専門学校卒業後からなので20年以上になります。
基本手当の所定の給付日数 | 被保険者であった期間 | |||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | ||
区分 | 全年齢 | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
ちなみに、特定理由離職者の方は、給付日数が変わるので注意してくださいね。
(特定離職者とは、いわゆる「雇止め」で離職した方や、正当な理由で自己退職した方などです。)
上記の表から被保険者であった期間が20年以上だった場合、150日の失業手当が受給できます。
ただし、失業手当と特別支給の老齢厚生年金の同時受給はできません。
一方で、65歳からは失業手当と老齢年金の併給が可能になります。
特別支給の老齢厚生年金とは
昭和60年の法改正により、厚生年金保険の受給年齢が60歳から65歳に引き上げられたことにより、旧厚生年金法から現行法に段階的に移行するための措置です。
つまり、受給期間が5年後になることに対しての緩和策として設けられた制度になります。
・生年月日 男性 昭和36年4月1日以前
女性 昭和41年4月1日以前
上記の人は、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。
定額部分と報酬比例部分があり、生年月日に応じて受給年齢と受給できる部分が異なります。
この特別支給の老齢厚生年金は、失業手当との併給ができないためTさんはどちらかをご自身の判断で選択しなければなりません。
退職金 減額リスク 65歳未満と65歳比較
![](https://chita-san-blog.com/wp-content/uploads/2024/04/26959699_m.jpg)
65歳まで正規雇用で働ける方は、失業手当よりも、定年退職まで働く方がお得です。
65歳未満で退職した場合、早期退職扱いになり退職金が減額されるリスクがあります。
さらに、賞与も受け取れない可能性もあります。
そして、退職すると社会保険料が全額負担になります。
自己都合退職扱いになると失業手当は、待機期間と給付制限が設けられます。
失業手当の待機期間とは、ハローワークで求職の申し込みを行ってからの通算7日間を指します
待機期間中は、失業手当を受け取ることができません。
自己都合離職者や懲戒解雇の場合は、さらに2〜3ヶ月の給付制限も設けられます。
その間は収入がなくなります。
ちなみに私の勤務先は、定年が60歳です。
この場合、退職金は60歳の定年時に受け取ることになります。
その後、再雇用で65歳まで働くことができます。
私には、特別支給の老齢厚生年金はありません。
また、退職金を60歳で受け取るため退職金減額のリスクは減少します。
したがって、社会保険料を考慮すると、64歳11ヶ月まで働いてから退職するのが最善の選択肢でしょう。
まとめ
65歳未満で退職すると失業手当を受け取ることができます。
65歳以降の高年齢求職者給付金よりも、給付日数が長い可能性があります。
さらに、失業給付期間中に公共職業訓練を利用して、スキルアップもできます。
ただし、特別支給の老齢厚生年金との併用は不可なので要注意です。
定年退職が65歳の方は、65歳未満で退職すると様々なリスクもあります。
個人的には65歳の定年まで働き、退職金と高年齢求職者給付金を一括で受け取ることをお勧めします。
記事の内容は、原稿作成時点のデータです。
また、この記事は私の知見に基づく一般論です。
ここに記載されているのは、筆者の経験に基づく一般的な見解です。